――「地域差」「適用時期」「在留更新」まで一気に見直すチャンス――
10月、賃金の“新しい当たり前”が始まる
厚生労働省は2025年9月5日、都道府県審議会の答申を取りまとめ、全国加重平均1,121円(前年1,055円から+66円)と発表しました。改定額は10月1日以降、各地で順次発効します。例えば、東京都1,226円は10/3発効、兵庫県1,116円は10/4発効。
タイトルにある「再点検」は単なる言い回しではありません。
最低賃金の引上げは、雇用契約・就業規則・賃金テーブル・割増単価・控除運用・在留更新まで、実務の土台を揺るがします。とくに外国人雇用では、法令順守が在留資格の維持(更新・変更)にも直結します。
10月適用を前に、拠点単位での総点検を進めましょう。
何が決まったのか:数字と時期の“正しい”つかみ方
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全国加重平均:1,121円
…あくまで「平均」。適用は勤務地の都道府県額です。
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発効時期:10月上旬から順次
…都道府県ごとに公示日・発効日がズレる点に注意(例:東京10/3、兵庫10/4)。
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最高/最低の目安
…最高水準は東京1,226円、最低水準は1,023円台
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“特定(産業別)最低賃金”が別建てで存在
…該当する場合は地域別と産業別の“高い方”を適用。製造・運輸など対象の可能性がある業界は必ず確認。
外国人雇用で見落としがちな5つの論点
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勤務地基準で適用
多拠点・派遣・請負では、実際の就労場所の額が基準。
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在留更新への連動
最低賃金未満は法令違反として扱われ、更新・変更の審査に悪影響。特に特定技能は「日本人と同等以上の報酬」が大原則。
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「最低賃金に算入できない手当」がある
通勤手当や一時金、法定割増など、下限比較の対象外となる項目があるため、基本給や毎月定期・一律の手当で下限を満たす設計に。
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固定残業代(みなし残業)の設計
基礎時給が地域下限以上であることが大前提。固定残業代込みで下限を超えていても違法になる場合がある。
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寮費・食費等の控除
控除は「手取り」を下げるだけで時給の下限比較には使えない。控除の合意・上限管理も必須。