――「方向性のメモ」から「実務の改定」へ、今なにが動いているのか
発表は“ゴール”ではなく“スタート”
8月28日、出入国在留管理庁(入管庁)が「外国人の受入れの基本的な在り方の検討のための論点整理」を公表しました。
これは法務大臣の私的勉強会の成果をまとめたもので、法令や告示の即時改正ではありません。
ただし、論点整理の公表と歩調を合わせるかたちで、すでに省令の具体改正がパブコメ段階に入り、実務が動き始めています。
論点整理はなにを示したのか:枠組みの“見直し候補”
論点整理は、受入れ政策の「量と質」を含めた幅広い論点を俯瞰しています。法務大臣の会見でも、勉強会の成果を踏まえ入管庁内にプロジェクトチーム(PT)を設けて検討を進める趣旨が示されました。つまり、検討フェーズを制度設計フェーズへ移行させるための“踏み台”という位置づけです。
重要ポイント
これは制度改正そのものではない(=即日、運用は変わらない)。
ただし行政内部の検討体制(PT)に接続しており、次の具体案に向けた動きは始まっている。
「進むのか?」への答え:少なくとも一部は“もう動いている”
論点整理の公表と同時期、在留資格「経営・管理」の上陸許可基準について、入管庁が省令改正案のパブリックコメント(8/26〜9/24)を開始。
資本金要件や常勤職員、申請者の学位・実務経験などを明確化・強化する案が示されました。
工程表(概要)には「10月上旬公布・10月中旬施行(予定)」の記載もあります。さらに、これに連動して経済産業省も「外国人起業活動促進事業」告示の一部改正案のパブコメを開始しています。
実務的な含意
起業・投資型の受入れ(経営・管理)は資本要件等の“ハードル”が上がる見込み。
「論点整理」は方向メモだが、省令案は具体の制度。少なくともこの領域では見直しが進行中と言える。
いま取るべきアクション(企業・支援機関・志望者)
1)パブコメ資料の一次確認とシナリオ分岐
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起業・投資ルート(経営・管理)を検討中の企業・個人は、省令案の概要PDFを一次資料で確認。資本計画や採用計画、学位・実務要件の適合性を点検。公布前でも準備は前倒しが安全です。
2)代替ステータスの検討(要件ギャップが出る場合)
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技術・人文知識・国際業務(いわゆる技人国)や**起業促進スキーム(経産省告示)**の活用余地を比較検討。入管庁省令案に合わせて経産省告示も改正案が並走している点を踏まえ、制度の“つながり”で設計する。
3)タイムラインの“幅取り”
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概要の工程表は予定であり、公布・施行時期は変動し得る。採用・投資・渡航計画に2~4週間のバッファを確保。
4)社内ガバナンス:一次資料で意思決定
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ブログやSNSの解説は参考に留め、MOJ/ISA・e-Govの一次資料を原本として扱う。最終的には官報ベースの公布文で確定判断。
よくある誤解と落とし穴
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誤解①:論点整理=制度改正の決定
→ ×。論点整理は検討の指針。改正は別途、案の提示→パブコメ→公布→施行の手続を経る。
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誤解②:パブコメ開始=内容は確定済み
→ ×。「省令案は“案”」。寄せられた意見や調整により修正される可能性がある。確定は公布時。
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誤解③:起業促進スキームは旧要件のまま
→ ×。経産省告示も改正案が走っている。起業計画は両省の動きを一体で追う。
エグゼクティブまとめ
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事実:入管庁が8/28に論点整理を公表(勉強会成果・制度改正そのものではない)。
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進展:同時期に「経営・管理」省令改正案がパブコメ中。資本金要件・常勤職員・学位/経験などの見直し案と10月上中旬の公布・施行予定(概要ベース)が示された。連動して経産省告示の改正案も走っている。
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評価:問いに対する答えは**「進む」。少なくとも一部領域では制度改定が実務段階に入っている。全社的には一次資料に基づく意思決定と前倒し準備**が妥当。