レアアース供給不安で見直す「代替できない材料」|
特殊砥石・研削油剤の評価リスト
代替できない材料は、レアアースだけではありません。
本記事は、2026年7月15日時点で確認した公開情報をもとに整理しています。
情報確認日 2026年7月15日
カテゴリー 製造業・ニュース解説
この記事で分かること
代替しにくい品番の見つけ方
特殊仕様、一社購買、輸入品、客先指定品などを品番単位で確認します。
代替準備度の分け方
候補の有無だけでなく、評価・条件設定・承認までを6区分で管理します。
優先して確認する品番
停止時の影響、調達リードタイム、代替準備度の3軸で判断します。
特殊砥石や研削油剤を、レアアース製とする記事ではありません
この記事は、特殊砥石や研削油剤がレアアースを原料にしていると一括りにするものではありません。 共通するのは、供給元が限られる場合があること、代替評価や条件設定に時間がかかること、 必要な承認が終わるまで欠品した日に切り替えにくいという調達上の性質です。
レアアース供給不安を、研削現場でどう読むか
材料組成を直接結び付けるのではなく、代替評価に時間がかかる調達構造の共通性を確認します。
供給先の偏りと代替供給網の構築
- 一部のレアアースで対日輸出が細っている
- 企業によって在庫・調達経路・影響度が異なる
- 供給先の分散は段階的に進められている
- 新しい供給網の産業化には時間と検証が必要
欠品日に切り替えにくい材料
- 特殊寸法・特殊形状の砥石
- CBN・ダイヤモンドホイール
- 客先指定・社内認定済みの砥石
- 評価済みの研削油剤
- 一社購買品・輸入品・受注生産品
候補品があることと、欠品した日に現場で代替できることは別です。
レアアース鉱石から特殊砥石・研削油剤へ、材料組成を示す直接的な関係を表すものではありません。
レアアースの供給をめぐり、日本企業が調達や生産への影響をリスクとして開示する例が増えています。
Reutersによると、2026年5月からレアアースに言及する企業開示が増え、 5月と6月の約200件のうち、3分の2を超える開示が輸出規制による悪影響、 または将来の影響可能性を挙げました。 一方で、現時点では生産や業績への大きな影響はないと説明する企業もあり、 影響は業界、使用量、在庫、調達経路によって異なります。 [1]
中国税関データでは、テルビウムと酸化ジスプロシウムの対日輸出が 2025年11月から2026年5月まで確認されず、 酸化イットリウムも2025年12月以降、ごく少量にとどまったとReutersは報じています。 [1]
ただし、すべての企業で直ちに生産が止まっているわけではありません。 在庫量、使用する材料、調達先、代替準備の状況によって影響は変わります。
日本側では、供給先を分散する取組も進んでいます。
双日は、豪州Lynasからのサマリウム輸入を2026年4月に追加し、 中・重希土類の調達品目を2027年半ばごろまでに最大6種類へ増やす方針です。 双日の公式発表でも、ジスプロシウムとテルビウムに加え、 サマリウム、イットリウム、ルテチウム、ガドリニウムを扱う計画が示されています。 [2] [4]
一方、供給網の構築は段階的です。
南鳥島周辺では、水深約6,000メートルからレアアース泥を回収する試験に成功しました。 ただし、経済産業省は、産業化には採掘から分離・精製までの全工程と 経済性の検証が必要だと説明しています。 [3]
国レベルの供給先分散に時間がかかるように、工場でも、 代替候補を登録しただけでは切り替え準備は完了しません。
この記事で確認する5項目
自社にある「欠品した日に切り替えられない材料」を、品番単位で見つけます。
代替しにくい品番
特殊仕様、客先指定、一社購買、輸入品などを確認します。
止まる工程
欠品時に影響する機械、工程、対象製品をつなげます。
納期・供給ルート
標準納期、実際納期、供給元数、輸入・受注生産を確認します。
代替評価・承認
候補、加工テスト、条件設定、社内・客先承認を確認します。
安全在庫・見直し日
使用量、納期、保管条件、再注文基準、次回確認日を決めます。
「代替できない材料」とは何か
本記事でいう「代替できない材料」とは、同等品が存在しない材料だけではありません。
候補品があっても、評価、条件設定、承認が終わっておらず、 欠品した日に切り替えられない材料を含みます。
設備に合わない
寸法、取付部、用途、最高使用周速度が使用機械に合っていない状態です。
品質評価が未完了
加工面、寸法、研削焼け、寿命、加工時間などを確認していない状態です。
条件が確立していない
ドレス条件、加工条件、油剤の濃度や流量が決まっていない状態です。
承認が必要
客先指定、変更管理、品質部門などの必要な承認が終わっていない状態です。
供給先が限られる
特殊仕様、一社購買、輸入品、受注生産品、再製作品などです。
代替候補があることと、評価・条件設定・承認が終わっていることは別です。
確認1:代替しにくい品番を洗い出す
すべての購買品を一度に調べる必要はありません。
まず、客先指定品、特定設備専用品、特殊寸法・特殊形状の砥石、 CBN・ダイヤモンドホイールなどの再製作品、一社購買品、輸入品、 社内認定済みの研削油剤を確認します。
代替テストの記録がない品番や、納期が長いフィルタ、ドレッサ、副資材も対象です。
購入価格が高いものだけを見るのではありません。 安価でも、その品番がないと工程が止まるなら、先に確認します。
確認2:欠品すると何が止まるか
品番ごとに、欠品時の影響をつなげます。
月に一度しか使わない砥石でも、その砥石でしか加工できない工程なら、 停止時の影響は大きくなります。
研削油剤も同じです。複数設備で共通使用している油剤が欠品すれば、 一台だけでなく、複数の工程へ影響することがあります。
購入金額や月使用量だけで順位を決めず、止まる工程と客先納期まで確認します。
確認3:標準納期と供給ルートを確認する
品番表には、通常の標準納期と最近の実際納期を記録します。
在庫品か受注生産か、新規製作・再製作に何日かかるか、 国内品か輸入品か、供給元が一社だけかも確認します。
最小発注数量、見積有効期限、最後に納期を確認した日も残します。
「前回はすぐ入った」という記憶ではなく、 販売会社やメーカーから得た現在の回答を記録します。
確認4:代替評価と承認状況を見る
代替準備度は、候補の有無だけではなく、評価・条件設定・承認の状態まで分けて管理します。
未調査
代替候補をまだ調査していない状態です。
候補なし
現時点で候補が見つかっていない状態です。進行段階とは別に管理します。
候補あり・未評価
型番は登録されているものの、加工テストをしていない状態です。
テスト中
品質、加工条件、寿命などを評価している状態です。
条件付き使用可
使用設備、製品、条件などを限定すれば使用できる状態です。
評価・承認済み
指定した範囲で、実際に切り替えられる状態です。
「候補あり・未評価」を「代替可能」として管理しないことが重要です。
砥石では、寸法、用途、最高使用周速度、砥粒、粒度、結合度、組織、形状、 加工面、寿命、ドレス条件、加工時間、安全上の適合を確認します。
研削油剤では、使用濃度、泡立ち、臭気、防錆、洗浄性、ろ過との相性、 作業環境、加工面、砥石寿命、廃液や管理方法を確認します。
記録には、評価担当者、承認者、評価日、使用できる設備・製品、 条件付きの場合の制限事項、評価記録の保存場所も残します。
確認5:安全在庫と次回見直し日を決める
代替しにくい材料だからといって、無制限に在庫を増やす必要はありません。
月使用量、最大使用月、標準納期、欠品時の停止影響、 保管場所、使用期限、保管条件を確認します。
再注文の基準と、次回の見直し日も決めます。
研削油剤では、保管温度や使用期限を確認します。
特殊砥石では、保管中の取扱いに加え、 再注文時に必要な図面、仕様、前回製作記録を整理します。
安全在庫は買いだめではありません
代替評価に必要な時間と補充に必要な時間を考えて、 工程を止めないための量を決めます。
確認の優先順位は3軸で決める
すべての品番を同じ順番で確認する必要はありません。
停止時の影響
工程停止、対象製品、客先納期への影響が大きいかを確認します。
調達リードタイム
標準納期、実際納期、新規製作・再製作期間を確認します。
代替準備度
未調査、未評価、テスト中、承認済みなどの状態を確認します。
停止すると客先納期へ直結し、標準納期が長く、 代替準備度が「未調査」または「候補あり・未評価」の品番から確認します。 正式な採点基準を設けていない場合は、掛け算の数式にはせず、3軸を並べて判断します。
代替できない材料チェックリスト
主要品番ごとに、次の項目を確認します。
□ 品番・製品名
□ 使用機械
□ 使用工程
□ 対象製品・客先納期
□ 月使用量・最大使用月
□ 現在庫・安全在庫
□ 標準納期・最近の実際納期
□ 国内品・輸入品
□ 標準品・特殊仕様品
□ 供給元の数
□ 代替準備度
□ 評価した加工条件
□ 使用できる設備・製品
□ 条件付きの場合の制限事項
□ 評価担当者
□ 承認者
□ 評価日
□ 評価記録の保存場所
□ 保管条件・使用期限
□ 再注文の基準
□ 最終確認日
□ 次回見直し日
この記事のまとめ
まず、停止時の影響が大きく、納期が長く、 代替準備が進んでいない主要3品番を選びます。
次に、品番から使用機械、工程、対象製品、客先納期までをつなげます。
そのうえで、標準納期、供給元、代替準備度、 評価担当者、承認状況、安全在庫を確認します。
代替候補が「ある」だけで終わらせず、 欠品した日に実際に切り替えられる状態まで準備できているかを見直しましょう。
よくある質問
特殊砥石・研削油剤の代替準備で、よく確認される内容をまとめました。
Q 特殊砥石にはレアアースが使われているのですか?
この記事は、特殊砥石や研削油剤にレアアースが使われていると一括りにするものではありません。 共通点として扱っているのは、供給元が限られる場合があり、 代替評価や条件設定、承認に時間がかかるという調達上の性質です。
Q 代替候補が登録されていれば安心ですか?
候補があるだけでは、切り替え準備が完了したとはいえません。 少量テスト、加工面、寿命、加工条件、安全上の適合、 使用できる設備や製品、必要な承認まで確認します。
Q 代替準備度はどのように管理しますか?
未調査、候補なし、候補あり・未評価、テスト中、 条件付き使用可、評価・承認済みの6区分で管理します。 「候補あり・未評価」を「代替可能」と扱わないことが大切です。
Q どの品番から確認すればよいですか?
停止時の影響、調達リードタイム、代替準備度の3軸で決めます。 客先指定品、特定設備専用品、一社購買品、輸入品、 再製作に時間がかかる品番を優先します。
Q 安全在庫は多く持つほどよいですか?
多ければよいとは限りません。 月使用量、標準納期、代替評価に必要な時間、 保管期限、保管場所、資金負担を見て決めます。
参考情報
- Reuters「Corporate Japan's rare-earth warnings get louder as China keeps the spigot closed」 :日本企業の開示状況と、一部中・重希土類の対日輸出状況。
- Reuters「Japan's Sojitz to expand Australian rare earth imports as partner broadens product lineup」 :双日による豪州産中・重希土類の調達品目拡大計画。
- 経済産業省「Press Conference by Minister Akazawa」 :南鳥島周辺での試験回収と、産業化に必要な全工程・経済性の検証。
- 双日「Sojitz Begins Mineral Exploration and Development of Rare Earths Mines」 :取り扱う中・重希土類の拡大と供給網分散の取組。
主要品番の使用工程、標準納期、供給元、代替候補、 評価・承認状況、安全在庫を整理し、 欠品時に実際に切り替えられる状態かを確認します。
